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事務所コラム

相続土地国庫帰属制度(令和5年4月27日施行)

令和5年4月27日施行の相続土地国庫帰属制度についてまとめました。

1.制度創設の背景
①土地利用ニーズの低下等により、土地を相続したものの、土地を手放したいと考える者が増加している。
②相続を契機として、土地を望まず取得した所有者の負担感が増しており、管理の不全化を招いている。

▼土地問題に関する国民の意識調査(出典:平成30年度版土地白書)
土地所有に対する負担感:負担を感じたことがある又は感じると思う 約42%
▼令和2年法務省調査
土地を所有する世帯のうち、土地を国庫に帰属させる制度の利用を希望する世帯 約20%

2.関連する法律
相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(令和3年法律第25号・以下「帰属法」)
相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律施行令(令和4年政令第316号)

3.負担金等
土地の性質に応じた標準的な管理費用を考慮して算出した10年分の土地管理費用相当額の負担金の納付が必要(帰属法10Ⅰ)
※その他申請時に、審査に要する実費等を考慮して政令で定める審査手数料14,000円の納付も必要。
・国庫に帰属した土地は、普通財産として、国が管理・処分
・主に農用地として利用されている土地、主に森林として利用されている土地→農林水産大臣が管理・処分(帰属法12Ⅰ)
・それ以外の土地→財務大臣が管理・処分(国有財産法6)

4.土地の要件

▼却下要件(その事由があれば直ちに通常の管理・処分をするに当たり過分の費用・労力を要すると扱われるもの)
承認申請は、その土地が次の各号のいずれかに該当するものであるときは、することができない(帰属法2Ⅲ、帰属政令2)。
・建物の存する土地
・担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
・通路その他の他人による使用が予定されている土地(墓地、境内地、現に通路、水道用地・用悪水路・ため池の用に供される土地)が含まれる土地
・土壌汚染対策法上の特定有害物質により汚染されている土地
・境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地
→これらのいずれかに該当する場合には、法務大臣は、承認申請を却下しなければならない(帰属法4Ⅰ②)。

▼不承認要件(費用・労力の過分性について個別の判断を要するもの)
法務大臣は、承認申請に係る土地が次の各号いずれにも該当しないと認めるときは、その土地の所有権の国庫への帰属についての承認をしなければならない(帰属法5Ⅰ、帰属政令3)。
・崖(勾配が30度以上であり、かつ、高さが5メートル以上のもの)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの
・土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地
・除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地
・隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地(隣接所有者等によって通行が現に妨害されている土地、所有権に基づく使用収益が現に妨害されている土地)
・通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地
・土砂崩落、地割れなどに起因する災害による被害の発生防止のため、土地の現状に変更を加える措置を講ずる必要がある土地(軽微なものを除く)
・鳥獣や病害虫などにより、当該土地又は周辺の土地に存する人の生命若しくは身体、農産物又は樹木に被害が生じ、又は生ずるおそれがある土地(軽微なものを除く)
・適切な造林・間伐・保育が実施されておらず、国による整備が追加的に必要な森林
・国庫に帰属した後、国が管理に要する費用以外の金銭債務を法令の規定に基づき負担する土地
・国庫に帰属したことに伴い、法令の規定に基づき承認申請者の金銭債務を国が承継する土地
→これらのいずれかに該当する場合には、法務大臣は、不承認処分をする(帰属法5Ⅰ)。
※却下、不承認処分のいずれについても、行政不服審査・行政事件訴訟で不服申し立てが可能。

5.手続きの流れ
①承認申請
【申請権者】
相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る)により土地を取得した者
※共有地の場合は共有者全員で申請する必要あり
②法務大臣(法務局)による要件審査・承認
・実地調査権限あり
・国有財産の管理担当部局等に調査への協力を求めることができる
・運用において、国や地方公共団体に対して、承認申請があった旨を情報提供し、土地の寄付受けや地域での有効活用の機会を確保
③申請者が10年分の土地管理費相当額の負担金を納付
④国庫帰属

 

6.負担金算定の具体例

①宅地
面積にかかわらず、20万円
ただし、一部の市街地(注1)の宅地については、面積に応じ算定(注2)
(例)
100㎡  約55万円
200㎡  約80万円

②田、畑
面積にかかわらず、20万円
ただし、一部の市街地(注1)、農用地区域等の田、畑については、面積に応じ算定(注2)
(例)
500㎡  約72万円
1,000㎡  約110万円

③森林
面積に応じ算定(注2)
(例)
1,500㎡  約27万円
3,000㎡  約30万円

④その他※雑種地、原野等
面積にかかわらず、20万円

注1:都市計画法の市街化区域又は用途地域が指定されている地域。
注2:面積の単純比例ではなく、面積が大きくなるにつれて1㎡当たりの負担金額は低くなる。

▼負担金計算の特例
承認申請者は法務大臣に対して、隣接する2筆以上の土地について、一つの土地とみなして、負担金の額を算定することを申し出ることができる(帰属性令5)。
例 隣接する2筆以上の土地を申請する場合
(例:市街化区域外の宅地)
1筆ごとに算定
例  宅地:100㎡の土地×2=40万円
面積を合算
例  宅地:200㎡の土地×1=20万円

2023年12月11日

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